明治生まれの丸山氏は、厳格な中にもユーモアや温かさを持った教育者です。
私は10年ほど前、たまたま新聞で「餅つきひとつでも命がけにやれ」という、丸山氏の強烈な言葉に出会いました。
力の出し惜しみをせず、目の前ことに全力で取り組みなさい、と。
以来、氏の存在は、ぼんやりと頭の片隅にはありました。
それが、倫理研究所の研修所を訪れた時に、はっきりと顕在化したのです。
館内は、隅々まで掃除が行き届き、静謐な時間がゆっくりと流れていました。
トイレのスリッパは、床のタイル目地にキチンと揃えて並べる。
洗面所の洗面器には水一滴残っていない。
「使う前より美しく」が徹底的に貫かれています。
案内して頂いた職員の方も、とても丁寧で、それでいて押し付けがましくない。
倫理研究所の教義の詳細までは分かりませんが、日々の生活、そこから正していくのだ、というメッセージが伝わります。
建築は、思想に引っ張られる形で、良く共鳴し、良く共振していると感じられました。