先日、建築家の伊東豊雄さんが設計された、座・高円寺を見に行きました。

座・高円寺は2008年に杉並区に建設された、本格的な舞台芸術のための劇場です。
高円寺は阿波踊りが有名ですが、地域に根ざした文化活動を支える為に、ホール、稽古場、演劇資料室、カフェなどで構成されています。

伊東さんは現代日本を代表する気鋭の建築家です。
以前から建築雑誌で気になっていたのですが、特に階段とカフェは見応えがありました。

階段は濃いえんじと白のコントラストが鮮やかです。
ここに円形の窓から入った光と照明とが重なりあって、光の濃淡が流動的に展開しています。観劇までのアプローチ空間が、ドラスティックに演出されています。

また、カフェは深海にたゆたうような…。
孔のような窓から、光の束が注ぎ込まれています。
それでいて、不思議に落ち着くのです。

伊東さんは中世のテント小屋のイメージを持たれていたそうです。
想像するにその頃は、まだまだ娯楽も素朴で、皆が闇に浸り、闇と共存し、ただただおおらかな広がり下で劇を共有していたのでしょうか。

伊東さんは60歳を過ぎられて、建築家としてますます円熟味を増しています。
その一方で特定の作風には停滞せず、自分の殻を意識して破って挑戦的な試みを続けています。
その尖がった設計姿勢とスピリットにはしびれます。

建築家もここまで振り切れていると、快い笑いが腹の底からこみ上げて、清々しい気分に満たされました。

伊東さんはどこまでいくんだろう…。