大学卒業後、設計事務所に勤め出してまもなくのことです。

集合住宅の依頼が事務所に舞い込んできました。

東京都内の住宅密集地に、RC造で2階建て、8世帯という小さな規模です。

クライアントに所内コンペの提案をお見せすると、たまたま新人の私の案が採用されました。

光や風や人の気配など基本的な要素を念頭に、それぞれの世帯の間に共有出来る1坪の光庭を挟み込んだ案でした。

クライアントは直観で決めたそうです。

幸運にも、それが私の担当初物件となりました。

現場監督にも恵まれ、大変でしたが、何とか設計から現場まで管理しました。

選んで頂いた時の嬉しさは、素直に残っています。

設計の魅力と醍醐味を味わった体験でした。

この時の感覚が、今に至る、建築を自分の生業としている要因であることは間違いありません。

その意味で、クライアントのFさんには感謝し、恩人であると思います。